工場や倉庫の外壁や屋根としてよく利用されている波型スレート。工場や倉庫に求められる耐久性や耐火性などが高く、工場や倉庫の外壁・屋根といえば波型スレートといったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?しかし、工場や倉庫の外壁・屋根として多くのメリットを持つ波型スレートも、定期的なメンテナンスを怠れば、劣化が早まり余計なコストがかかってしまうでしょう。今回は工場や倉庫の外壁・屋根として人気の高い波型スレートについて、特徴やメリット・デメリット、メンテナンスの方法をお伝えします。企業で工場や倉庫管理を担当される方は、ぜひ参考にしてみてください。
スレートとは
「スレート」とは薄い板状の屋根材で、石から作られています。
ただし、現在扱われているのはセメントと繊維が主成分の「化粧スレート」と呼ばれる商品です。
工場や倉庫などの屋根や外壁によく使用される波板スレートは波の形をした化粧スレートです。
波板スレートの種類
波板スレートは、波打っているような特徴的な形状を持つのですが、その波の大きさによって『小波スレート』と『大波スレート』に分類されています。業者によっては、大波スレートと小波スレートの中間ぐらいの物を中波スレートと呼んだりするのですが、ここでは大波スレートと、それ以外を小波スレートに分けて使用用途などを簡単にご紹介しておきます。
<小波スレート>
小波スレートは「波の幅が63.5㎜、高さが18㎜」程度の波板スレートを指しています。下で紹介する大波スレートの約半分ほどの波の大きさになっています。現在では、外壁専用の建材として採用されているのですが、築年数が経過した古い建物では、屋根も小波スレートが採用されている場合があります。
<大波スレート>
大波スレートは、上述した小波スレートの山部分について、幅・高さが約2倍ほどある波板スレートになります。大波スレートは、骨材とセメントを圧縮し形成しているので、強度が高いことが特徴です。ただ、小波スレートよりも若干割高になってしまいます。使用用途としては、屋根・外壁両方に採用されています。
波型スレートを使うメリット
耐久性
波型スレートは耐用年数25年以上ともいわれる優れた耐久性があります。定期的なメンテナンスは必要ですが、長く使用できるというのは、コスト面から見て大きなメリットと言えるでしょう。
耐火性
スレート板の素材は、セメントと繊維を混ぜ合わせたものが中心です。これは、国が定める法定不燃材料であり、高い耐火性があるとされています。保管するものにもよりますが、可燃性のものを入れる場合は特に耐火性は重要であり、法定不燃材料で作られている波型スレートを使用することはメリットのひとつです。
遮音性
波型スレートは雨風の音が内部に大きく響かず、外部からの音も入りにくい造りです。そのため、内部の音も外に漏れにくく、高い遮音性が期待できます。倉庫内の作業にはフォークリフトのような車両を使う場合もあり、遮音性が高い波型スレートであれば、周囲に迷惑がかかるリスクの低減も可能です。
低コスト
ほかの外壁に比べ安価に設置できるのも波型スレートの大きなメリット。建築コストが安く耐久性も高いため、コストを抑えて建築でき、さらに長期にわたってコストを抑えた倉庫運用が可能です。
波型スレートを使うデメリット
汚れが目立ちやすい
波型という形状から、埃(ほこり)やゴミが付着しやすく汚れが目立ってしまう可能性があります。もちろん定期的なメンテナンスにより汚れは落とせますが、放置していると倉庫全体の見栄えも悪くなってしまうでしょう。
古いスレートはアスベスト含有の可能性がある
2004年以前に製造されたスレートは、発がん性や中皮腫などを起こす可能性が高いアスベストが含まれている可能性があるといわれています。そのため、経年劣化により張り替えが必要になった場合は、特別な処理が必要です。
波型スレートに使われているアスベストは発じんの度合いを表す3段階のうちのレベル3で、アスベストのなかでは危険性が高い方ではありません。しかし厳重に管理しなくてはならないため、廃棄する場合は特別管理産業廃棄物として最終処分場に持ち込む必要があります。そして、処分時の収集運搬は必ず特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を受けた業者に依頼しなくてはならず、余計なコストがかかってしまうでしょう。
波板スレートのメンテナンス方法
①フックボルトの補修・交換
波板スレートそのものは25年持つとしても、固定するボルトまでは長持ちしません。
ボルトは長いこと使用していると、錆びや隙間ができてしまうのです。
ボルトの劣化が原因で波板スレートの耐用年数が短くなる可能性もあります。
波板スレートが長持ちするからと放置せず、固定ボルトは定期的に点検・交換を行いましょう。
②部分張替
強風による飛来物や地震などで一部分だけ劣化(割れやヒビが入った場合)も、全体の張り替えは必要ありません。劣化した部分だけを張り替えることで修繕できます。
③塗装工事
波板スレートは、表面に塗装を施すことで色あせや汚れの付着問題を解消することが可能です。上述したように、汚れが付着しやすいという特徴を持っています。付着した汚れによって、スレート材そのものが腐食するといった心配はないのですが、建物の美観を大きく壊してしまう原因になるので、美観維持などの要望があれば塗装を検討すると良いでしょう。
④カバー工法
屋根カバー工法は、既設のスレート波板の上に金属の屋根材をかぶせる方法です。
大がかりなメンテナンスになるものの、廃材がほとんど出ない点が魅力となります。
屋根が二重になることで、断熱性が向上します。
まとめ
今回は、工場や倉庫などで採用される波板スレートのメンテナンスについてご紹介してきました。近年は、倉庫や工場などでも美観を重視する傾向が高くなっていることから、波板スレートよりも、金属系素材が採用されることが多くなっています。ただし、波板スレートは、高い耐久性を持つことや、断熱性・遮音性・耐火性にも優れているなど、建材としての性能が非常に高いうえ、安価だということから、現在でも人気の素材となっています。
注意が必要なのは、波板スレートは、表面に汚れが付着したとしても、セメントだから腐食などはしないと考え、メンテナンスなんてしなくても雨漏りの心配はないと考えてしまう方が多い点です。確かに、スレート材そのものが汚れなどで腐食してしまう心配はないのですが、固定のためのボルトなどがサビてしまうことで、そこから雨漏りが発生してしまう恐れがあります。他にも強風で飛ばされてきた物が衝突し、ひび割れや穴あきなどの症状が出てしまうことも珍しくないので、メンテナンスフリーだとは考えない方が良いです。
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